こじらせナースの日常

看護師目線でお役立ち情報をお届けします。

急変対応に強くなるには。

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患者さんが急に具合が悪くなることはあります。
意識がない状態を発見することも。

そんな急変時に思うように動けない人は多いんじゃないでしょうか。

これを読んで少しでも急変対応の苦手意識を減らすことに役立ててもらえたらと思います。

医療従事者でなくてもわかるように書きますが、医療従事者向けの内容になります。

心停止時の対応

到着時から心静止だったが蘇生して心拍再開したということで入院依頼あり。

※心停止と心停止の違い
心停止→血液を送り出すポンプの機能が働いていない状態
心臓の動きが止まったとは少し違う
心室頻拍(VT)や無脈性心室頻拍(脈なしVT)、無脈性電気活動(PEA)、心静止の4つが該当する。
モニターがついておらずこれらがわからなくても総頚動脈で脈が触れなければ心停止と判断する。

心静止→心臓の動きが全く認められない状態。ドラマで心電図がピーッという音と共に真っ直ぐな横線が表示されるシーンを見たことがあると思います。あれです。

お迎えに行ったら看護師2人がストレッチャー横で立っていた。
医師2人は患者さんに背を向けてパソコン業務。
モニターは波形は出ているが心拍40表示。


PEAじゃないかと思った私は
これ脈触れます?
私が脈をとろうとした瞬間、1人の看護師が言った。


「脈触れないです。
先生が何も指示を出してくれません。」


私はすぐに脈を確認する。
触れないじゃないか。
心マします。
と言って胸骨圧迫をしようとした瞬間、
もう1人の看護師が言いました。


「看護師指示でやるんですか?」


私的にはかなり衝撃を受けました。

指示がないと出来ない事はある

看護師の業務は保健師助産師看護師法という法律で規定されています。

看護師の業務範囲は2つに分けられます。

療養上の世話

療養上の世話は看護師が自分の判断でする。

例えば、患者さんのベッド周りの環境を整えるとか、食事介助、体拭きや着替えの介助、トイレの介助、おむつ交換、寝返りの介助や車椅子移乗の介助などなどですね。

診療の補助

診療の補助は医師の指示のもと行う医療行為。
要するに、
指示がないのに看護師判断で勝手にやってはいけない医療行為です。

診療の補助という言葉だけ聞くと、検査や処置の手伝い?と思いがちですけど
採血や点滴ルートの確保、内服や注射薬剤の投与、これはケースバイケースですけど胃管挿入や膀胱留置カテーテル挿入など。
あと吸引もよくしますよね。


医師の指示がないとやってはいけないことが看護師にはたくさんあるんです。

だから一概に指示待ち人間が良くないと言うことではありません。
受けた指示を速やかにこなすことも求められます。

よく考えよう

看護師はよくアセスメントをします。
情報を整理して色々な角度から状況をみて何が問題か考える、どんな危険が潜んでいるか考える、何が必要なのかどんなケアが必要か考えるます。

心臓マッサージに医師の指示は必要?

胸骨圧迫(心臓マッサージ)は
一般の方でもしていいことです。 

心肺蘇生やAEDの講習は一般市民向けにも行われていて、発見時から救急隊到着までに一般市民の方が適切に心肺蘇生をすると、救急隊到着まで何もされなかった人に比べて救命率は上がります。

リハビリや薬剤師、検査技師、窓口にいる受付の人も講習を受けていて必要な時に動けるように備えています。

一分一秒を争います。
遅れれば遅れるほど救命率は下がります。
自分で心停止だと判断したら、医師の指示を待たずにすぐ胸骨圧迫です。

本人や家族の意向が確認できない以上は心肺蘇生をします。

疑問をそのままにしない

病院の外で遭遇した場合には自分が頼りかもしれませんが、
病院内であれば近くに医師や看護師がいることも多いと思います。
脈が触れるかどうか自分だけの判断では難しいという人もいるかもしれません。
そういう時は別の人にも確認してもらいましょう。
基本10秒以内に確認ですけどね。

いざという時に動けない

私は病院で急変対応研修の指導者をしていますが、やはり自分が初めに行動を起こすことに抵抗を感じている人が多いです。
応援に行くと取り巻きがたくさんいて誰も何もしてない。
でも誰かがやり始めれば自分にできることを探して動ける人はいます。
指示を出せばこなせる人はもっといます。

いざとなると緊張して頭が真っ白になる
何をすれば良いのかわからなくなる

こういう人はたくさんいると思います。

新人さんだと怖いと感じる方も多いですよね。

緊張や恐怖を克服しよう

なぜ恐怖を抱くのか

死ぬかもしれない怖さは私は何年看護師をしても慣れることではないと思いますし、慣れてはいけないとも思っています。 
抱いて当然の感情です。

なぜ緊張するのか焦るのか

1番は普段から逸脱した状況に置かれるから。
イレギュラーなことが起きれば戸惑います。
想定していないから焦ります。 
あらゆることへの準備ができていないから緊張して焦って動けなくなります。

どうやって乗り越えるか

こういった時の対応で場数を踏むには救急領域で経験を積むのが手っ取り早いかもしれません。
一般病棟でも急変は起きますが、そう毎日起きることではありません。
たまにしか起きないことに動揺せずに対応するのは難しいですよね。
ではどうするのか。
日頃からイメージトレーニングをすることです。
準備は大切です。
あらゆう想定をして、こういう時はまずこうする、あれを確認して準備して…というような感じで頭に入れておくのです。
ちなみに私はいつも通勤途中に考えています。
救急カートの点検、進んでやりましょう。
何の薬剤がどこに入ってるか、どんな時に使うか頭に入れましょう。
救急カートに入っている物品に積極的に触れましょう。
もちろんBLS(一次救命処置)やACLS (二次救命処置)の知識をつけることは大前提です。

BLSとACLSはテキスト代だけでなく受講料もかかるし結構お高いんですよね。
しかも定期的に更新が必要。

ACLS高すぎる…
という方はICLSの取得もオススメです。
私の周りにもACLSは高いからICLSを取得した人います。


最後に

心停止を発見したら指示を待つのではなく、発見したあなたがすぐに胸骨圧迫です。
1人だけでどうにかできることではありません。すぐに人手を集めてください。
急変が起きたら遠くから見ている人ではなく勇気を出して飛び込みましょう。
何か1つでもあなたにできる事はあります。 
救える命を自分達の手で増やしましょう。